正中弓状靭帯圧迫症候群

原因不明の腹痛体重減少で悩まれている方は、正中弓状靭帯症候群の可能性があります。食後の腹痛、運動後の腹痛、食後の嘔気・嘔吐・下痢等を自覚し、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群の治療を受けても改善しない場合には、正中弓状靭帯症候群も鑑別診断が必要です。

 正中弓状靭帯は、横隔膜の右脚と左脚が椎体前面で結合したものであり,腹腔動脈の前面に位置しています。

 通常この靭帯が問題となることはありませんが、正中弓状靭帯圧迫症候群の方は、生まれつき正中弓状靭帯が低い位置にあるために、呼気時や食後に腹腔動脈をより締め付けることにより,上記のような上腹部虚血症状をきたすことがあります。また腹腔動脈起始部狭窄により肝臓への血流が,上腸間膜動脈から膵十二指腸動脈アーケードを介して逆行性に供給されるため,膵十二指腸動脈系の血流量が増加し血行力学的ストレスが加わり,動脈瘤が生じることがあります。動脈瘤は破裂してしまうと死亡することもあります。

 治療法は、腹腔鏡手術で正中弓状靭帯を切離します。腹腔鏡手術は、カメラを通して何倍にも視野を拡大して観察できる利点があり、本治療には非常に適していると考えられます。通常、出血量はごく少量です。当科では術中超音波検査で血流測定を行い、靭帯の完全な切離を確認しますので、手術時間は23時間程度です。

 正中弓状靭帯切離前

腹腔動脈に狭窄


 正中弓状靭帯切離後

Ao:大動脈、CA:腹腔動脈

腹腔動脈の狭窄は改善


術後は早期に退院が可能で、通院して頂き症状の改善具合を確認していきます。残念ながら症状が改善しない場合も報告されています。その際には、血管内治療などを考慮していきます。