胃がんの診療に携わる医師(名前をクリックするとプロフィールが見れます)


福岡大学消化器外科における胃がん診療の特徴
  • 早期の胃がんから転移を有する進行した胃がんまでの治療を行っております。 
  • 早期胃がんの患者さんには可能な限り内視鏡による切除(EMRやESD)を行い、臓器の温存に努めています(早期がんに対する内視鏡治療(リンク)へ) 。

 

  • ロボット手術のプロクター(指導医)、ロボット外科専門医、内視鏡外科学会の技術認定医によるロボット手術や腹腔鏡手術を積極的に施行しており、経験豊富な医師による、出血や合併症が少ない患者さんにとって「負担の少ない治療」を目指しています。 

 

  • ほとんどの患者さんに小さな傷での腹腔鏡手術(またはロボット手術)が可能です

(膵臓や脾臓の合併切除が必要な胃がん、残胃がん、胃全摘後に胸の高い位置での吻合が 必要な場合などでも大きな傷で手術することはほとんどありません)。

 

  • 当院では、上部消化管チームとして食道がん、胃がんの両方を専門とする(胸部にも腹部にも精通した)医師が手術を行います。

 

ロボット手術指導医を「食道」と「胃」2つの領域で持っている医師は九州で3名のみで(2023年12月時点)。

  • なるべく胃を残す、機能を温存する手術を行っています。
  • がんの手術は、がんの再発を防ぐために周囲のリンパ節を確実に切除することが大切です。また、手術後の機能を落とさないことも重要です。この両立に取り組んでいます。
  • 手術ができないと言われた場合でも手術可能な場合があります。ご相談ください。
  • 開腹手術を勧められた患者さんでも、小さな傷で手術が可能な場合があります。ご相談ください。
  • 大学病院ですので、術前から糖尿病や心臓疾患などを有する患者さんでも、その領域の専門医との連携により安全な手術を目指します。他の病院では手術できないと言われた既往症、合併症を持った患者さんの手術も行っています。
  • 80歳以上の高齢の患者さんにも負担の少ない手術が可能です。
  • 他臓器への転移や浸潤を有する進行した胃がんの患者さんにも、抗がん剤や放射線治療などの方法を用いて「諦めない治療」を心がけます。
  • 進行胃がんのために、食事摂取が困難な患者さんには腹腔鏡下バイパス手術やステント療法を用いて食事摂取を可能にする方法を提示いたします。
  • 治療方針の決定に関しては患者さんとよく相談して患者さんに満足いただける治療を考えてゆきたいと思います。
  • 福岡市・福岡県以外の患者さんも当院で手術を受けられており、術後は当院と地元の病院と連携して経過観察や治療を行っています。遠方の患者さんもご相談ください。
  • 患者さんの来院から手術までの期間は患者さんの病状にもよりますが、迅速に(1-2週間)手術を行うように心がけています。
  • 胃癌だけでなく、GIST(消化管間質系腫瘍)、胃や十二指腸の良性疾患の手術、緊急手術(粘膜下腫瘍、潰瘍穿孔など)全てに腹腔鏡手術を行っています。
  • 十二指腸腺腫に対する腹腔鏡手術(LECS:内視鏡との合同手術)、正中弓状靭帯圧迫症候群に対する腹腔鏡手術(弓状靭帯切離)、脾動脈瘤への腹腔鏡手術(瘤切除や血行再建術)なども行っています。
  • 当院は全国的にも小さな傷で行う手術(腹腔鏡、ロボット)の割合が高いことで知られています。
  • 治療の導入はご自身の今後の生活に関わることです。些細なことでも結構です、遠慮なく電話など(福岡大学病院代表:092-801-1011)で消化器外科 吉村まで連絡、ご相談ください。
胃がんに対する内視鏡治療
  • 胃内視鏡(カメラ)を用いて、胃を切除せず「病変のみを削り取る」方法で最も体に対する負担が少ない治療です。主に早期胃がんに対して施行されます。
  • 比較的大きな病変でも、胃壁の深くに根を張っていなければ内視鏡的切除が可能です。外来担当医とご相談ください。
  • 詳細は内視鏡治療のページを御覧ください。

胃がんに対する手術治療(腹腔鏡手術・ロボット手術)
  • 当科では胃がんに対して積極的にロボット手術腹腔鏡手術を行っており、年間約100例以上、ほとんどの患者さんにこれらの手術を行っております。 
  • ロボット手術・腹腔鏡手術の利点は、傷が小さいこともありますが、手術する部分を拡大して観察するので、出血の少なく繊細な手術が可能な点も大きな利点です(図8-10)(video2)。 当院には最新型のda Vinci Xシステムがあります。希望される方は外来で相談してみてください(図12)。
  • ロボット手術や腹腔鏡手術は技術的には難しい手術とされていますが、当科ではロボット手術のプロクター(指導医)や内視鏡外科学会の技術認定医の資格を持った経験の豊富な医師が手術を担当しています。 
  • 特に難しいとされる幽門下リンパ節郭清の手技の工夫で2013年に手術手技研究会ビデオ賞をいただきました。合併症を減らすための取り組みです。
  • 脾臓摘出を伴う胃全摘術、一度胃を切除した後の胃にできるがん(残胃がん)手術などにも腹腔鏡手術が可能です。希望される方は外来で相談してみてください(図11)。 



video2 胃がんの腹腔鏡手術

内視鏡による出血の少ない、繊細な手術が可能です。





胃は脾臓に近いため脾臓周囲のリンパ節へ癌が転移を来すことがあります。

左のビデオのように、患者さんの病状によっては脾臓を温存しつつ、リンパ節を摘出する手術も行っております(すだれ状郭清)

脾臓周囲は動脈と静脈が複雑な走行をしており、血管を傷つけずに癌が残らない手術を行うには技術を要します。



ロボット手術は、術者の手となる道具に関節機能があるため、より繊細な手術が可能になりました。

ビデオは幽門下リンパ節郭清のビデオです。



食道胃接合部がん・胃上部がんに対する治療

 

  • 現在、食道胃接合部がん(食道と胃の境界部近傍のがん)、胃上部がんの頻度が増えてきていますが、以下のような理由からその治療は他の部位に比べて難しいとされています。(図13)。
  1. 食道の周囲には心臓、肺、大動脈などの重要な臓器が存在しており、食道周囲のリンパ節郭清では細心の注意を要する(図14)。
  2. 胃の上部を切除する(噴門側胃切除)だけでなく、食道の一部を切除する必要があるため、切除後の再建(食物の通過経路を作成する操作)に技術を要する。
  3. 胃の上部を切除する手術法(噴門側胃切除術)が選択されることが多いが、術後の逆流性食道炎が大きな問題となっている。
  • 現在、私たちは上部消化管外科チームとして胃がんだけではなく食道がん手術も同じチームで行っているため、食道周囲のリンパ節郭清や胸の中での再建操作にも熟練した医師が手術を行います。
  • また、噴門側胃切除後の再建方法として、術後の逆流性食道炎予防のために観音開き法ダブルトラクト法など患者さんに一番適した方法を選択しています。全ての患者さんに腹腔鏡下(またはロボット)手術、再建が可能です(図15、video3)。

Videoは接合部がんに対する下縦隔リンパ節郭清です。

食道に浸潤がある接合部がんには胸部下部食道周囲のリンパ節郭清が必要となります。

腹部から腹腔鏡を用いて郭清を行っています。

食道がん、胃がん両疾患に精通していますので、この領域のがんにも安全性と根治性を保った手術、治療を提供することが可能です。



video3 噴門側胃切除後の透視の写真

胃から食道への逆流を防止する"噴門"が切除されていますが、再建の方法を工夫することにより逆流しないようにすることが可能になりました。患者さんの生活の質の向上につながっています。


進行胃がんに対する集学的治療
  • 例えば肝臓や肺に転移をしたり、隣の臓器へ食い込んだような「進行した胃がん」の患者さんは手術のみでは十分な治療が得られない場合もあります。 
  • そのような場合には、手術以外の治療(抗がん剤治療や放射線治療、ステント療法、重粒子線治療、免疫療法など)(図16)を行うことになります。 
  • 抗がん剤は「胃癌治療ガイドライン」に準じた治療を行ってまいります。
  • 近年は副作用も比較的少なく効果も高い抗がん剤が次々に開発されてきており、うまくこれらの治療と手術とを組み合わせてゆくことが重要になります。 
  • 高齢の方でも、手術や抗がん剤の組み合わせにより症状の緩和や食事摂取が可能になることがあります。患者さんの体力に合わせて最善の治療法を提供させていただきます(図17)。
  • 患者さんとともに、諦めない治療を目指してゆきたいと思っております。



肥満症に対する減量手術(腹腔鏡下胃スリーブ切除術)

当科では、6か月以上の内科的治療で有意な体重減少および肥満に伴う合併症の 改善が認められない患者さんに対して腹腔鏡下胃縮⼩術(スリーブ状切除:胃を細くする方法です)を導入いたしました。腹腔鏡胃切除術に習熟した医師が手術を行います。減量のみでなく、関連する糖尿病、高血圧などの併存疾患に対する改善効果も得られています。詳細をお聞きになりたい方は、お気軽にご相談ください。