直腸がん術後排便機能改善の試み
  • 直腸がんの手術後は、たとえ肛門が残ったとしても手術の影響にて頻便便失禁などの症状(直腸切除後症候群と言います)に悩まされることがあります。
  • 直腸がなくなり便を多く溜めることができなくなり、肛門周囲の自律神経が過敏になることで頻便(排便の回数が増えること)になります。
  • また肛門括約筋の低下や自律神経障害により肛門を締める機能が弱くなり便失禁を起こすことがあります。
  • 直腸切除後の症状の改善には時間がかかり、地道な努力と細かい調整が必要です。担当医や看護師、検査技師などと相談して良い治療を選んで行けるように努めます。
  • 当院ではこのような症状を改善させるために様々な診断や治療を行っており以下に代表的なものを紹介します。

診断に必要な検査

   肛門内圧検査

  • 肛門内に細い管(圧センサー)を入れて、肛門の力を抜いた時(最大静止圧)や力いっぱい締めた時(最大随意圧)の肛門の締まる強さや肛門を締めた時の持久力を測定します。直腸癌術後の肛門機能低下のひとつに肛門を締める筋力低下があります。術前の肛門を締める力を測定し、術後の便失禁などを予測します。



 排便造影検査(ディフェコグラフィー)

  • 肛門から造影剤を注入し、安静時と肛門を締めた時、排便時の3パターンでX線撮影を行います。肛門括約筋の動きや肛門挙筋の動きなどが観察できます。


術後の便失禁や頻便の治療
  • 患者様の症状にあわせて、薬物療法を行います(止痢剤、ポリカルボフィル・カルシウム、セレキノン、抗コリン薬など)
  • 肛門を締める力を改善させるためにバイオフィードバック療法を行います。肛門周囲の筋肉を鍛えるために骨盤底筋群体操も併用して行います。
  • 自律神経の障害に対して仙骨神経刺激療法を行います。これは、肛門括約筋を司る仙骨神経を刺激することで神経過敏や自律神経の改善を試みる治療です。

骨盤底筋体操

  • 直腸の手術後は肛門を締める筋肉(括約筋といいます)の作用が弱くなることにより、便が漏れやすくなる(特に便が柔らかくなった時)「便失禁」と呼ばれる症状がおこることがあります。
  • 骨盤底筋を鍛えることにより、括約筋の力を強くして肛門を締める力を強くするのが骨盤底筋運動の目的です。



 バイオフィードバック療法

  • 肛門に圧センサーを入れて肛門を締めた時の圧をご自身の目で見ながらトレーニングする方法です。正しい肛門トレーニングを覚えることができます。

 仙骨神経刺激療法

  • 神経を刺激するリードの先端を第3,4仙骨神経近傍に留置し、持続的に刺激する事で神経の機能を改善させ、頻便や便失禁を改善します。電極植え込み型の治療法です。