食道がんの診療に携わる医師(名前をクリックするとプロフィールが見れます)


福岡大学消化器外科の食道がん治療の特徴
  • 早期食道がんから転移を有する進行した食道がんまで治療を行っております。

 手術、抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせた患者さんに最善の治療法を提示いたします。

  • 早期食道がんの患者さんには可能な限り内視鏡による切除(EMRやESD)を行い、臓器の温存に努めています(早期がんに対する内視鏡治療(リンク)へ) 

 

  • 2019年より食道がん手術は、ロボット(daVinci Xi)での手術を第一選択としています。

肋骨での制限がある食道がん手術において、ロボットは特に有用で、精密な手術が可能です。100%小さな傷(ロボットまたは胸腔鏡・腹腔鏡)での手術を行っています。

 

  • ロボット手術のプロクター(指導医)、ロボット外科学会専門医、食道学会専門医、内視鏡外科学会 技術認定医の資格を持った医師によるロボット手術(リンク)を積極的に施行しており、出血や合併症が少ない、患者さんにとって「負担の少ない治療」を目指しています。 

 

 ロボット手術プロクター(指導医)を「食道」と「胃」2つの領域で持っている医師は九州で3名のみ(2023年12月時点)。

 

  • 食道がんは頸部、胸部、腹部のリンパ節を切除する必要があります。当院では、上部消化管チームとして食道がん、胃がんの両方を専門とする(胸部にも腹部にも精通した)医師が手術を行います。

 

  • 他臓器への転移や浸潤を有する進行した食道がんの患者さんにも、抗がん剤や放射線治療などの方法を用いて「諦めない治療」を心がけます。
  • 手術が出来ないと断られた患者さんでも手術が可能、有効であった場合がありますご相談ください。
  • 開胸手術を勧められた場合でも小さな傷で手術が可能な場合があります。ご相談ください。
  • 大学病院ですので、術前から糖尿病や心臓疾患などを有する患者さんでも、その領域の専門医との連携により安全な手術を目指します。
  • 80歳以上の高齢の患者さんにも、状態に合わせた負担の少ない手術が可能です
  • 進行食道がんのために、食事摂取が困難な患者さんにはバイパス手術やステント療法を用いて食事摂取を可能にする方法を提示いたします。
  • 治療方針の決定に関しては患者さんとよく相談して患者さんにとって満足できる治療を選択してゆきます。 
  • がんの手術は、がんの再発を防ぐために周囲のリンパ節を確実に切除することが大切です。また、手術後の機能を落とさないことも重要です。この両立に取り組んでいます。
  • 福岡市・福岡県以外の患者さんも当院で手術を受けられており、術後は当院と地元の病院と連携して経過観察や治療を行っています。遠方の患者さんもご相談ください。
  • 食道がんだけでなく、すべての食道疾患の胸腔鏡手術を行っています(食道粘膜下腫瘍、食道憩室、特発性食道破裂、大動脈ステントの食道穿通、胃管癌など)。
  • 当院は全国的にも小さな傷で行う手術(胸腔鏡、ロボット)の割合が高いことで知られています。
  • 治療の導入はご自身の今後の生活に関わることです。些細なことでも結構です、遠慮なく電話など(福岡大学病院代表:092-801-1011)で消化器外科 吉村まで連絡、ご相談ください。

食道がんに対する内視鏡治療(EMR/ESD)
  • 胃内視鏡(カメラ)を用いて、食道を切除せず「病変のみを削り取る」方法で体に対する負担が少ない治療です。主に早期食道がんに対して施行されます。 
  • 比較的大きな病変でも、食道の壁の深くに根を張っていなければ内視鏡的切除が可能です。外来担当医とご相談ください。 
  • 詳細は「早期がんに対する内視鏡治療」へのリンクを参照下さい。

食道がんに対する手術治療(胸腔鏡・縦隔鏡・ロボット手術)
  • 当科では食道がんに対して積極的にロボット手術(胸も腹部の操作両方とも)による手術を行っており、100%の患者さんに小さな傷での手術を行っております(図1,2:胸腔鏡・腹腔鏡手術の場合)(2020年は約40例の食道切除再建を行いました:当ホームページ、症例数の項目を参照ください)。
  • 胸腔鏡手術・ロボット手術の利点は、傷が小さいこともありますが、手術する部分を拡大して観察するので、出血の少なく繊細な手術が可能な点も大きな利点です。
  • 食道は胸の中央に位置し、周囲には心臓、大動脈、気管、肺など重要な臓器に囲まれた場所に存在します。食道癌手術は肋骨のために操作が制限されたり、呼吸や心臓の拍動で手術する食道周囲は常に動いています。ロボットは道具に「関節機能」がついており、術者の手首の動きに合わせて自由に道具が動き、デジタルカメラと同様の「手振れ防止機能」がついているため、食道癌手術ではとても有用性を感じています。
  • 当院には最新型のda Vinci Xiシステムがあります。希望される方は外来で相談してみてください(図3)。
  • 胸腔鏡・腹腔鏡手術・ロボット手術は技術的には難しい手術とされていますが、当科ではロボット胸腔鏡・腹腔鏡手術の経験の豊富な医師(ロボット外科手術指導医・ロボット外科専門医・食道外科専門医、内視鏡外科学会技術認定医など)が手術を担当しています。 
  • 肺機能が悪く開胸手術や胸腔鏡手術が困難な患者さんには、より侵襲の少ない縦隔鏡(非開胸)を用いた方法で頸部と腹部だけの傷で手術を行っています。





Videoはロボット支援下手術(ダヴィンチ)での左反回神経周囲リンパ節(食道がんの転移が多い領域)の郭清ビデオです。

細い神経を温存しながらリンパ節を含む脂肪組織を切除します。

神経を牽引したり、電気メスの熱が伝わると神経麻痺が起こり、声帯の動きが悪くなってしまいます。

ロボットの道具は手振れ防止機能があり、細やかな手術が可能です。



食道がんの胸腔鏡・腹腔鏡下手術/食道癌の縦隔鏡手術
  • 食道がんの手術は頸部、胸部、腹部の3領域にわたる手術操作が必要で、体への負担が大きい手術の一つです。なるべくその負担を軽減するために、胸腔鏡(現在はロボット)と腹腔鏡を用いた手術を行っています
  • 基本的にどのような患者さんにも小さな傷での手術が可能です。食道がんの手術は、右の胸から行うため、肋骨が手術操作の邪魔をします。ロボットは操作道具に関節機能があるため、肋骨による操作制限を受けずに手術が可能です。
  • 食道がんの特徴として、声帯の運動を支配する左右の反回神経周囲にリンパ節転移が多いです。
  • この領域のリンパ節郭清をいかに安全に過不足なく行うかが、治療経過を左右します。胸の操作は腹臥位(うつ伏せ)で行います。良好な視野で手術が可能です(図4)(video1)。
  • 手術中は、反回神経を刺激して声帯が運動していることを確認しながら手術を行っています。

現在、反回神経麻痺は非常に少なくなっています。

また、当院でのこの取り組みの工夫が2020年の手術手技研究会でビデオ賞を受賞しました

NIM(Nerve Integrity Monitoring)システムを使用し、反回神経に直接APS電極を装着する方法です。

  • 食道を切除した後は、胃を細い形状として頸までつり上げ食物の通過経路を作成します(図5)。お腹の操作は腹腔鏡を用いて行います。
  • 食道と胃を吻合して食事の通り道を作ります。この際に、つなぎ目がほつれる(縫合不全)ことが多いと言われていますが、当院では胃の血流を手術中に確認したり、血流を保つ工夫を行っています。
  • 以前の手術既往などで胃が使えない場合には、小腸や大腸を用いて食物の通過経路を作成します。
  • 現在、私たちは上部消化管外科チームとして食道がんだけではなく胃がん手術も同じチームで行っているため、胸の操作だけではなく、お腹の中でのリンパ節郭清操作にも熟練した医師が手術を行います。
  • 通常、手術後2~3週間程度で退院が可能です。
  • 食道と胃の境目である食道胃接合部癌(近年増加しています)の手術にも同じ医師だけで行います。
  • また、肺機能が非常に悪く、開胸手術や胸腔鏡での手術も困難な場合には、縦隔鏡腹腔鏡を併用し、胸の手術操作をせずに食道を切除する方法を行っています。より負担が少なく手術が可能です。患者さんに適した方法を選択しています。
  • 食道穿孔(大動脈ステントの食道穿通、特発性食道破裂など)などの緊急手術も胸腔鏡で手術を行っています。

図4 食道がんの反回神経周囲リンパ節郭清

細い神経を温存しながら転移頻度の高いリンパ節を切除してゆきます(動画)

神経を電気刺激しながら、神経に異常がないことを確認しながら手術を行っています。



進行食道がんに対する集学的治療
  • 例えば肝臓や肺に転移をしたり、隣の臓器へ食い込んだような「進行した食道がん」の患者さんは手術のみでは十分な治療が得られない場合もあります。 
  • そのような場合には、手術以外の治療(抗がん剤治療放射線治療ステント療法、重粒子線治療)(図6)を行うことになります。 
  • 抗がん剤や放射線治療で効果が認められれば、手術を行えるようになることもあります。
  • 肺浸潤、大動脈浸潤があるような場合でも、小さな傷(胸腔鏡またはロボット)での手術が可能です。
  • 大動脈浸潤がある場合には心臓血管外科の医師により大動脈ステントを挿入し、大動脈壁を合併切除することで腫瘍を切除できる場合があります。
  • 高齢の方でも、手術や抗がん剤、放射線治療、重粒子線やPDT療法などの組み合わせにより症状の緩和や食事摂取が可能になることがあります。患者さんの体力に合わせた治療法を提供させていただきます(図7)。