大腸がんの診療に携わる医師(名前をクリックするとプロフィールが見れます)
福岡大学消化器外科 准教授 吉田陽一郎
福岡大学消化器外科 助教 愛洲尚哉

吉松軍平

(再生・移植医学)




福大病院消化器外科における大腸がん・直腸がん治療の特徴
  • 早期大腸がんから転移を有する進行した大腸がんまでの治療を行っております
  • 早期大腸がんの患者さんには可能な限り内視鏡による切除(EMRやESD)を行い、臓器の温存に努めています(早期がんに対する内視鏡治療(リンク)へ)
  • 腹腔鏡手術ロボット手術などの低侵襲治療積極的に施行しており、出血や合併症が少ない患者さんにとって「負担の少ない治療」を目指しています。
  • 直腸がんに関しては、経肛門内視鏡治療(taTME)ロボット手術などの最新の治療技術と抗がん剤や放射線治療などと手術の組み合わせでできるだけ肛門を温存する治療を行っています。
  • 当科では外科医の技術の高さが特徴です。ロボット手術の指導医が2名、内視鏡外科学会の技術認定医(合格率は20%台)が5年間で10名生まれております。また、九州で唯一の外科医のための症例見学施設にもなっております。
  • 当科長谷川は日本内視鏡外科学会技術認定制度の審査委員の大腸班の班長です。
  • 放射線と化学療法治療により直腸がんが消失した患者さんには手術を行わずに経過をみる場合もあります(Watch and wait ; Non-operative manegement: NOM:詳細は下記参照)担当医と相談下さい
  • 他臓器への転移や浸潤を有する進行した大腸がん・直腸がんの患者さんにも、抗がん剤や放射線治療、また免疫治療などの方法を用いて「諦めない治療」を心がけます。
  • 切除不能」と言われた患者さんも是非ご相談ください。何か手があるかもしれません(リンク)。
  • 治療方針の決定に関しては患者さんとよく相談して患者さんにとって満足いただける治療を考えてまいります。
  • 患者さんの来院から手術までの期間は患者さんの病状にもよりますが、迅速に(1-2週間)手術を行うように心がけています。
  • どうしても女性の患者さんにとって、大腸の病気は恥ずかしさがあると思いますが、当科ではご希望があれば、女性医師が担当させていただきます。

大腸がんってどんな病気?

大腸がん・直腸がんの診断と治療について長谷川先生がわかりやすく解説しています。ぜひ御覧ください。

 

左下の「youtubeで見る」を押すと拡大できます。



大腸がんに対する内視鏡治療(EMR/ESD)
  • 大腸内視鏡(カメラ)を用いて、腸を切除せず「病変のみを削り取る」方法で最も体に対する負担が少ない治療です。主に早期大腸がんに対して施行されます。
  • 比較的大きな病変でも、腸管の壁の深くに根を張っていなければ内視鏡的切除が可能です。外来担当医とご相談ください。
  • 詳細は「早期がんに対する内視鏡治療」へのリンクを参照下さい

大腸がんに対する手術治療(腹腔鏡・経肛門腹腔鏡手術・ロボット手術)
  • 当科では大腸がんで年間約300例、9割以上の患者さんロボット手術あるいは腹腔鏡手術を行っております。
  • 大腸がんに対するロボット・腹腔鏡手術の利点は、傷が小さいこともありますが、手術する部分を拡大して繊細な操作を行えるので、出血の少なく臓器に優しい手術が可能な点も大きな利点です。
  • 腹腔鏡手術は技術的には難しい手術とされていますが、当科では腹腔鏡手術の経験の豊富な内視鏡外科技術認定医・ロボット手術の資格医師が手術を担当しています。
  • 直腸がんに引き続き、結腸がんに対するロボット手術が最近保険適応になりました。当院には最新型のda Vinci Xiシステムがあります。希望される方はご相談ください(リンクあり)。

腹腔鏡手術の実際の画像です。

直腸癌に対するロボット手術


直腸がんに対するロボット手術

ロボット手術は腹腔鏡を更に進化させたもので、より繊細な手術操作ができます。福岡大学には最新型のda Vinci Xi があり、ロボット手術の指導医が手術を担当します。

(ロボット手術についてもう少し知りたい方はクリック



結腸がんに対するロボット手術

2022年4月より結腸がんに対しても保険診療にてロボット手術を行うことが可能になりました。繊細な手術が可能で、患者さんへのメリットも高まるものと期待しています!

当院は結腸がんに対するロボット手術の術者になるための見学指定施設です。


直腸がんに対する治療

直腸がんの治療はその他の部位に比べて難しいとされています。それは、

  • 狭く深い骨盤内での手術が必要で、がんの取り残し(局所再発)が起こりやすい
  • 手術部位の近くに膀胱や生殖器への自律神経が走行しておりこれらの神経を損傷すると排尿障害性機能障害などが起こる
  • 肛門を温存できるかどうかの問題がある

 上記の理由から直腸がんの治療は先進施設で受けることをおすすめします。

 

直腸癌手術の難しさ
直腸癌手術の難しさ


  • このような問題から直腸がんに対する腹腔鏡手術は難しいとされており、治療ガイドラインでも「慎重に行うように」と記載されています。
  • 私たちは直腸がんに対するロボット手術に力を入れており、経肛門内視鏡手術(taTME)や内括約筋切除術(ISR)などの手術を行っております。
  • 肛門の温存も積極的に行っており、進行した直腸がんでも手術の前に集学的治療を施行して病変を小さくしてから手術を行うことにより、可能な限り肛門を温存できるようにします。
  • 最新治療である術前放射線化学療法(CRT)術前化学療法(NAC)Total Neoadjuvant Therapy(TNT)も導入し、がんの治る可能性を高め肛門を温存しやすくします
  • 当科の長谷川教授は直腸がんに対する腹腔鏡・ロボット手術や経肛門内視鏡手術のエキスパートで、国際ガイドラインの作成や国内の手術指導者でもあります。
直腸癌に対する究極の肛門温存手術(ISR)

肛門をギリギリで温存する術式です。比較的難しい手術ですが、私達は可能な限り温存に努めております。

直腸がん手術における腹腔鏡手術の利点(クリックで動画再生します)



  • 当科での大腸・直腸手術の説明です。
  • 当科での手術の合併症についての解説です。

直腸がん術後の排便機能改善のための試み 
  • 当科では可能な限り肛門を温存する試みを行っておりますが、直腸癌の切除後には直腸が失われたことにより、排便回数が増える便失禁、排便がしにくい、肛門の痛みなどの症状が出ることが知られています。
  • 特にギリギリで肛門を残した際にはそのような症状が強く出ます。
  • そのような排便の状態は、患者さんの日常生活や仕事などへ大きな影響を与えますから、手術前に術後の予想される状態と生活への影響についてよく担当医と相談しておくことをお勧めします。
  • また当科では術後の排便状態を改善するために様々な試み(リンク)を実施しております。このような試みにより術後半年・一年・二年とゆっくり排便の機能が改善して来ます。
  • 当科では直腸がんの手術後の患者さんにアンケートを実施して、患者さんの状態を把握して適切な治療ができるように心がけております。

人工肛門・ストーマとは
  • さて、人工肛門(ストマ)とはどんなものでしょうか?

直腸がんの放射線・抗がん剤治療後のWatch and wait/NOM(非手術治療)
  • 直腸がんに対して術前治療(放射線(CRT)や化学療法(NAC)あるいはTNT)を行った患者さんのうち、一部の患者さんでよく治療が効いて腫瘍が検査で見えなくなることがあります(医学的にはcCR:臨床的完全奏功といいます)
  • 今までは検査で見えなくなったとしても、がん細胞のレベルで腫瘍が残っている可能性が高いため、手術で切除を行っておりました
  • 最近欧米を中心にそのような患者さんを手術せずに経過観察して、再発をせずに様子を見れる場合があることがわかってきており、その場合直腸をそのまま残すことが可能です(watch and waitといいます)
  • ただし、術前治療を受けた患者さんすべてが腫瘍が完全に消える(cCR)になるわけでなく、消えているように見えても経過観察中に再燃することもあるので注意が必要です
  • 我々の施設でもこのような治療方針を取ることは可能です。しかし、まだ最先端の診療方法でデータが少ないこともありますので、詳細に関しては担当医に相談ください。

進行大腸がんに対する集学的治療
  • 例えば肝臓や肺に転移をしたり、隣の臓器へ食い込んだような「進行した大腸がん」の患者さんは手術のみでは十分な治療が得られない場合もあります。
  • そのような場合には、手術以外の治療(抗がん剤治療や放射線治療)を行うことになります。
  • 近年は副作用も比較的少なく効果も高い抗がん剤が次々に開発されてきており、うまくこれらの治療と手術とを組み合わせてゆくことが重要になります。
  • 抗がん剤治療においては副作用などの管理が重要です。私たちは抗がん剤専門の薬剤師などと協力してできるだけ副作用を軽減しながら抗がん剤の効果を最大にできるように勤めています。
  • 近年は薬剤の進歩も著しいものがあります。患者さんとともに「諦めない治療」を目指していきたいと考えています。
  • 当初は手術ができないと考えらていた進行した大腸がんの患者さんも抗がん剤や放射線治療によって手術可能になる症例もあります。諦めず頑張ってゆきましょう!

大腸がんに対する免疫治療
  • 近年、がん治療において免疫治療の役割がクローズアップされてきておりますが、私達も進行したがん患者さんに対して積極的に施行しています。
  • がん細胞は患者さんの白血球やリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる手段を持っています。このがん細胞の特徴を修正しがん細胞が患者さんの免疫細胞により攻撃されるようにするのが免疫チェックポイント阻害薬です。
  • 全ての患者さんにこの治療が有効なわけではなく、事前にがん細胞の遺伝子の変化などをチェックして、効果の予想される患者さんに行うことになります。
  • また、保険診療ではありませんが、我々は免疫細胞治療(αβT細胞療法)も行っています。この治療は体内の免疫のバランスを整えつつがんを攻撃することができるアルファ・ベータT細胞というリンパ球を自分の血液から分離して、体外で活性化・増殖させ、再び体内に戻す治療で、副作用の発現が少なく安全な治療法だと考えられています。
  • 通常、抗がん剤との併用で免疫治療を行います。免疫治療は国内で豊富な免疫細胞治療の培養・治療実績を有する瀬田クリニック福岡(リンクあり)にて行っており、私たちは、臨床研究を通じて本治療の有効性を報告してまいりました。
  • 本治療に関しては担当医にご相談下さい。